理事長基本方針

一般社団法人 諫早青年会議所
2023年度 基本方針

【スローガン】

Let’s make our stories!

~ このまちと自分自身の物語をつくろう ~

【はじめに】

JCは何をやっているのかよく分からない。

JCなんてやる余裕はない。

歴代から現役に至る会員の活動が評価される一方で、会員拡大の現場などにおいて、このような声を耳にすることがあります。

JCはこのまちにいらないのか。

58年もの長きにわたり、このまちのために活動を続け、そして今も、奉仕の精神で多くの時間を費やしているメンバーの頑張りを知る身として、悔しさと虚しさを感じずにはいられません。しかしながら、今年度理事長を務めさせていただく立場として、真摯に受け止め省みる必要があるのではないかとも感じています。

実は私自身、JCが何をやっているのか、JCが自分に何をもたらすのか、よく分からないまま入会しました。委員長を担ったころには、JCについてそれなりに分かっていたつもりでしたが、もっと早く理解していれば、地域への広がりのあるもっと良い事業ができていたかもしれません。個人としてももっと成長できていたかもしれません。

JCとは何でしょうか。

諫早青年会議所の存在意義とは何でしょうか。

日本の青年会議所は、「明るい豊かな社会」をつくることを理念(長期ビジョン)として掲げています。その「明るい豊かな社会」が何であるかについては、時代に即した解釈がなされますが、現在は、「多様性と持続可能性がある地域」とされています。この理念を基礎として、全国各地の青年会議所において、理事長が毎年作成する基本方針(短期ビジョン)の下、社会の課題を解決する活動を行い、地域へと運動を展開していきます。

JCは、多種多様な課題の中から、毎年異なる課題の解決に取り組むため、活動内容が毎年変わることになります。同じ課題に継続して取り組む訳ではないため、すべてがうまくいく訳ではありませんが、言わば起業家精神をもって、毎年新たな課題に挑み続けるからこそ、社会に希望をもたらす変革を生み出す起点となり得るのです。

また、JCは、地域の青年に、発展と成長の機会をもたらすプラットフォームとしての役割も果たします。地域課題への意識が希薄だった私のような若者に、活動を通して視野を広げさせ、仲間とともに試行錯誤する中で、まちをより良くする運動をつくることができる人材へと、生まれ変わるきっかけを与えてくれます。仕事のみでは得られない成長が、人生を彩り豊かなものにしてくれます。

諫早青年会議所は、このまちに必要とされる組織としてあり続けなければならない。

そのためには、もっとできることがあるはずです。

少なくとも私には、もっとできることがありました。

そこで、本年度諫早青年会議所は、「Let’s make our stories! ~このまちと自分自身の物語をつくろう~」をスローガンに掲げました。

人は、理念や制度など、想像上の「物語」に共感し、集団を形成することで、個人の能力をはるかに超えた物事を創造してきました。逆に、どんな社会も組織も人の集まりであり、そこには個人の人生の「物語」があります。私たちは組織の一員でもあり、同時に一人の個人でもあるのです。

私たち会員自身が、まずはJCの本質を理解した上で、まちと自分自身の物語を主体的に想像し、互いに尊重し合いながら、決して自己満足ではない、まちと自分自身の未来につながる活動を、ともに創造していく。

それはすなわち、多様性に富む、より強い個人が集まったより強い組織へと進化することであり、今まで以上に、より良いまちにするための運動を起こす活動を行っていくということです。

一人ひとりの輝く個性が調和する多様性のある地域、一人ひとりが笑顔で自らが望むより良い人生を歩み続けられる持続可能性のある地域、このような明るい豊かな社会を実現するための必要不可欠な存在として、諫早青年会議所は、これからもこのまちにあり続けるのです。

【未来を担う子どもたちの物語】

私は、縁あってこのまちに暮らす子どもたちが、縁あってそこに集う仲間たちと、自分自身が主人公の、自らが望む自分だけの物語をつくり上げていってほしい、と考えています。

変動性、不確実性、複雑性、曖昧性、このような言葉に代表されるように、先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代を迎えています。そのような時代には、変化に対応すべく、多様性のある社会を目指すべきとされています。

それはすなわち、多様性のある社会では、人口減少と相まって今後ますます個人が尊重される一方で、一人ひとりの個性が今まで以上に要求され、活用されていくということでしょう。そしてその個性は、何よりも自らが主体的に想像し、自分自身の経験を通して人生を創造していく過程で育まれるものです。

また、非認知能力のような基礎的な能力も高めておくことで、これまでにない変化に対しても、多様な個性を備えた個人が協力し合い、加速度的に進歩したテクノロジーも駆使しながら、生き抜いていくのではないでしょうか。私は基本的に人間の可能性、特に子どもたちの適応力を信じています。

しかしながら、子どもたちはか弱い存在です。一人でできることには限界があります。都会との地域間や地域内でも個々人の置かれた状況により、子どもたちが経験できる機会には差があります。多様な選択肢の中から自らの望む選択ができるよう、自身が子どもたちの環境にもなる大人も、ともに学びながら、環境づくりをサポートしていく必要があるでしょう。子どもたちにとって、地域での経験が、個性を育て、より良い人生を歩む礎となるとともに、幼少期の物語の舞台や登場人物を大切に思う心を育み、未来の子どもたちと未来の地域を担う物語へと紡がれていくと信じています。

【このまちの課題解決の物語】

私は、持続可能なまちには、主体的に考え行動する個人が必要である、と考えています。

人任せで誰かがやってくれるのを待つのではなく、当事者意識を持ち、自分ごととして考えることができる人が多いほど、強い地域となり、多くの地域課題に前向きに取り組んでいけると思います。

 社会の分断を招いた感染症、災害をもたらす気候変動、格差が拡大する資本主義、政治のあり方を問う国際情勢など、あらゆる分野において、これまでの連続した文脈ではなく、現実を改めて問い直す局面に差し掛かっていると感じます。それは同時に、その舞台における当事者として、自分の人生の物語も、見つめ直すタイミングを迎えているということではないでしょうか。

このまちは、交通の要衝として可能性を秘めた地域であり、西九州新幹線が開業し、幹線道路の整備も進むなど、インフラが拡充されています。一方で、歴史的に水害に弱い土地であり、昨今の気候変動を踏まえると、果たして災害への備えは十分でしょうか。人口減少に若者の県外流出も重なり、企業では人材不足、後継者不足が深刻化しています。移住者や異文化に対する理解など、今後のコミュニティはどうあるべきでしょうか。

その他にも地域課題は多岐にわたり、複雑化しており、その解決は一段と難しくなっています。さらに多様な視点から、まちをより良くする運動を生み出すためにも、行政、民間、住民と協働した取り組みを行うことも、積極的に検討する必要があります。

 縁あって私たちが暮らす、人生の物語の舞台であるこのまちを、主体的に想像力を働かせ、当事者意識を高めることで、笑顔で暮らせる持続可能なまちに変えていきましょう。

【会員拡大と個人の成長の物語】

私は、諫早青年会議所が、変革をもたらす起点として、地域に必要とされる存在であり続けるためには、会員の拡大と個人の成長を通して組織が進化し続ける必要がある、と考えています。

40歳で卒業を迎えるJCには、若さを失わず、時代に合った組織として活動する仕組みが内在されています。しかしそれは同時に、会員の拡大がこの組織の宿命であるということでもあります。会員の拡大は、地域のために活動する人材が、このまちにまた一人増える、ということを意味します。年齢、業種やバックグラウンドが異なるメンバーは、互いに刺激を与え合い、成長を促す存在であるとともに、多様な議論と活動を生み出す源泉でもあります。一人でも多くの仲間が増えることで、より大きな運動につながり、ひいては地域社会からの信頼へとつながります。

また、全国的傾向でもありますが、近年諫早青年会議所においても、卒業までの在籍年数の短期化が見られます。JCに対する理解が曖昧なままでは、会員拡大の場面はもちろんのこと、JCにおける成長もおぼつかないでしょう。新入会員のみならず、私たちも今一度、JCとその存在意義について、しっかりと理解する必要があります。

会員拡大にあたっては、対象の分析に基づいた拡大手法の検討を行い、全会員で取り組めるように戦略をもって臨みます。個人の成長についても、JCにおける目標を個々に位置付け、その成長を促す仕組みを構築するなど、戦略的に取り組みます。入会後に個人が成長するほど、組織としての魅力も高まり、個人と組織の両面から会員拡大にも寄与するものと考えます。個人の成長は、会員拡大と異なり自らの意志が強く結果に反映するものです。役職の有無に関わらず、全会員が自らの成長の物語を想像し、目標を持って活動することができれば、より主体的で魅力的な組織へと進化していけると確信しています。

【持続可能な組織への進化の物語】

私は、地域の運動へとつながる活動を行うとともに、持続可能な組織であるためには、貴重な時間を効率的に使い、本質的な議論に集中できる仕組みが必要である、と考えています。

コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)化が予想以上に進展したと言われています。私たちも当初から率先して取り組み、組織運営や対外事業において有効に活用して参りました。

しかしながら、今、これまでの必要にせまられた個別的対応から、組織のあるべき姿をデザインした全体的な攻めの対応へと、革新するチャンスを迎えています。

私たちは、仕事や家庭などとのバランスを調整しながらJC活動を行っているため、限られた時間の中で生産性を上げ、費やした時間に対して最大限の効果を得る必要があります。また、特定の役職への負担の偏りや個人の能力への依存を是正し、より多くの会員が発展と成長の機会を得られるようにすることも必要です。

そのためには、時間の使い方、議案や会議の手法、会員間での情報共有や作業の分担などの現状分析を行った上で、クラウドシステムをより積極的に活用してさらなるDX化を推進するなど、目的達成に最適な手段を選択すべきと考えます。

組織全体で効果的効率的に運動を起こしていく、持続可能な組織への進化の物語を想像し、ともに創造していきましょう。

【共感を生む広報の物語】

私は、諫早青年会議所が、地域社会を始めとするステークホルダー(利害関係者)の理解を得て、良好な関係を築くためには、共感を生む物語が必要である、と考えています。

 広報にあたっては、ステークホルダーの特性に応じて、どのような情報を、どのようなタイミングで、どのような方法により発信すれば効果的か、あらかじめ想定するなど、戦略的に取り組むこととします。単に伝えるではなく、真に伝わるためには、自己満足の情報発信ではなく、受け手の立場に立って物語を構築し、メディアについても各種ツールの特徴を活かし、効果的に選択する必要があります。

 私たちの想いが、共感を生む物語となって伝わったとき、地域を巻き込む運動と新たな仲間の創出の機会となり、持続可能な組織へとつながるものと信じます。

【より良い事業を実施していくために】

私たちが、良い事業を構築するためには、まずは会員一人ひとりが定款・諸規定を理解・順守し、各事業に真摯に向き合い、考えて、議論を重ねていくことが重要です。つぎに意思決定機関である理事会が正常に機能する必要があります。会議体の開催については、新型コロナウイルス蔓延の状況下にあっても、中止という選択肢ではなく、近年取り入れているリモート会議やハイブリッド会議も含め、実施できる環境を整えて参ります。また会議において重要なことは事前準備です。仕事は準備が8割と言われていますが会議に臨む姿勢も同様です。単に時間や労力を使うのではなく、誰が見てもわかりやすく、必要なものを作成し、期限を厳守して会議には臨むべきと考えます。有効的且つ効率的な会議体を運営することでより良い事業を構築して参ります。

【SDGsへの取り組みの物語】

私は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けたより良い運動を展開していくためには、改めて、SDGsのビジョンに対する理解が不可欠である、と考えています。

「日本の青年会議所はSDGs達成に向けた運動を推進することを宣言する」とのSDGs推進宣言の下、諫早青年会議所もSDGsを念頭に事業を構築して参りましたが、ともすれば、17の目標・169のターゲットの個別の文言のみに目が向きがちです。社会の認知度が高まり、2016年の発効から2030年の目標達成へ向けて折り返し地点を迎える本年、その根底にある、「世代を超えて、すべての人が、自分らしく、よく生きられる社会」、といったSDGsの世界観を再認識する必要があります。その理解を踏まえれば、より身近に感じ、当事者としての意識が高まります。物語に落とし込み、SDGsに取り組む企業や団体との連携も見据えながら活動に取り組んでいくことで、社会が必要とする運動への展開がより円滑に進むと考えます。

【最後に】

最後までお読みいただきありがとうございました。

いかがでしたでしょうか。これが今の私が、一生懸命に想像した物語です。

これからは引き続き想像しながらも、実際に創造していくプロセスです。

今度は、あなたの物語を聞かせてください。

なにも恥ずかしがることはありません、みんな違うから面白いのです。

私の物語も新たな想像が膨らみ、より良く変化していくことでしょう。

とても楽しみにしています。

仮にうまくいかないことがあったとしても、後から読み返したら、きっとそれは物語の大切なエピソードになっているはずです。それにあなたは一人ではありません。私たちの物語には、必ず支え合う仲間が登場します。

「人が想像できることは、必ず人が実現できる。」

私たちは、もっと成長できます。

私たちの組織は、もっと必要とされます。

私たちのまちは、もっと良くなります。

あなたと私とこのまちの物語を語り合い、このまちと自分自身の人生を、より良いものにつくり上げていきましょう。

基本方針

  1. 未来を担う子どもたちのための事業
  2. このまちの課題解決のための事業
  3. 会員拡大と個人の成長の推進
  4. 持続可能な組織への進化
  5. 共感を生む広報の展開
  6. SDGsへの取り組み